一番高価な買いモノ

 

インド初日、早くもやってしまいました。空港からタクシーでゲストハウス街へ移動し、ビクビクしながら目当てのゲストハウスを探していると、『Hi、日本人?』とめちゃ流暢な日本語で話しかけてくる声が。旅人っぽい日本人と一緒にいました。『どこいくの?ホテル探してるの?いいとこ紹介するよ』

もちろんわかってました。

 

『向こうから話しかけてくるインド人を信用してはいけない!!』

 

半ば強引に振り切ろうとすると、そのインド人と一緒にいた日本人旅人が言います。

「この人の言ってるホテル本当に良いよ。俺の友達だし、多分信用して大丈夫と思うよ」

 

ほう…。日本人のお墨付きときたか。それなら話は違う。

もともとインドに入ってから超絶不安を感じていた僕は日本人に出会えた嬉しさもあり、その人の言うことに従って宿を決めました。

 

それからというもの、そのインド人にコルカタを案内してもらうことに。その人の名はRagさん。ラグーさんは日本人の奥さんと子どもがおり(自称)、3人でTOKYOに住んでいるらしく(自称)、今はお休みで自分だけインドに帰って来ているとのことでした(自称)。

コルカタで有名なカレー屋さんに連れて行ってもらい、インド映画を見て、チャイを酌み交わしました。終始優しくて、一瞬でも悪い人なんじゃないかと疑った自分を恥じたくらいです。

 

その夜、ラグーさんが尋ねてきました。

 

『インドでの旅行の行き先は決まってる?決まってないなら一緒に考えてあげるよ。よかったら鉄道のチケットも手配してあげる。友人に鉄道会社で働いてる奴がいるから口利きで安くできるよ。』

 

僕は思いましたよ。

「ついにきたか…!」
さすがに警戒し始めた僕は、「なんでそんなに優しくしてくれるんですか」と聞きました。

 

『カルマだよ。善いことをすると自分に善いことが返ってくる。神様が見てるからね。俺はただ自分の行いを神様に見せたいだけなんだ。』

 

ほう…。

 

実際彼は毎晩8時には必ず帰宅してお祈りをするという強い信仰心の持ち主です。一緒にいる間の真面目な言動もあり、この時点で僕はラグーさんのことをほぼほぼ信用してしまいました。

 

過去に戻れるならこの時の自分をぶん殴ってやりたいです。

 

ラグーさんのオススメに従ってルートを組み、鉄道のチケットを探してもらいました。チケットの手配とか面倒だし、口利きで安くしてくれるなら多少ぼられたとしてもまあいいやろう、くらいの心持ちやったと思います。

アホか。

次の日、またラグーさんと待ち合わせて色々案内してもらいました。

そして夕方、『リョータ!チケットあったよ!』全部で7区間コルカタから南下してぐるっとニューデリーに向かうルートです。

 

「値段は?」

『15000ルピー(約25000円)。』

 

んん!?高くないか!?いや、でも7区間だしこんなもんなのか…??

不幸なことに、コルカタの宿ではいっさいWi-Fiが使えず、移動手段の相場を知ることができませんでした。

 

こっからラグーさんは畳み掛けにきます。

 

『これでもだいぶ値切った方なんだ。他で買うこともできるけどもっと高いはず。これだけ値段が高いのは上のクラスの席を用意したからさ。車両ごとに警官が配置されていてセキュリティは完璧だ。インドの鉄道は置き引きが多いからね。俺はお前にトラブルにあって欲しくないんだ。しかも今インドは1ヶ月の休暇中でチケットを取るのがすごく難しくなってる。俺は友人のおかげでゲットできたけど、もしこれを逃したらあと1週間はコルカタで待たなきゃいけない。ちなみに1つ目の列車の出発は1時間後だここから駅まで30分はかかる早く決めろ‼︎‼︎』

 

ええええええええーーーー1時間後…!それを逃したら1週間後…コルカタに1週間!この怖い怖いコルカタに1週間!!死ぬ!でも高い!25000円て!2週間は生活できるわ!でも良いやつなんやし…夜行バスとか怖いしな…なんかあっても警官おるなら安心やろ…。安全を金で買うようなもんや。ラグーさん信用できそうやし、今までお世話になったしな…。何よりコルカタに1週間もおらなあかんのが苦痛でたまらん!何もすることない!いやでも高いっ…それにしても高い…。1時間後の25000円か、1週間後のようわからん値段か、、、んんんんんんんんんんんああああああああああああおおおオッケーー!買います!

 

みたいな脳内やったと思います。僕はWi-Fiと考える時間を制限されるだけでアホになるんですね。本当チョロいです。

 

こうして僕は旅の中で最も高い買い物を終えました。

 

数日後、ハンピの宿で相場を聞いて愕然としたのは言うまでもありません。ラグーさんにもなかなかのマージンがいったことでしょう。

それでもまだ諦めてはいませんでした。


「列車のクオリティはそれはもうものすごいはず!!」


…車内に警官なんて一人もいませんでした。エアコンすら付いてない便の方が多いくらいです。クラスも全てノーマルです。

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藤本のHPは限りなくゼロに近づきます。

でも、別に僕は騙されてチケットを買ったわけじゃありません(警官の有無はともかく)。ろくに調べもせずに、あるかもわからない商品の価値を見出してしまったわけです。よく言う『インドの洗礼』?いや確実に防げるミスでした。「よくしてもらったんだから、相手の希望も満たしてやりたい」という日本人的な考えと、自分のアタマの弱さが招いた事故でした。

 

 

 

 

…ここで終わると、ただ自分はアホだという宣言をネットにしただけなので、注意喚起でもしておきます。(そんな変わらないか)

 

①インド人に限らず、他人からモノを売られた時は必ずリサーチを(普通みんなやりますよね!!)。ネットが繋がらない場合は日本人宿にでもアドバイスを求めて逃げ込みましょう。

 

②『今じゃないとダメ!』みたいな謳い文句は、その理由がデタラメなことが多いです。とにかく早く買わせたいだけなので。

 

③借りを作らない方がいいです。僕みたいに、良いことされると断り辛いって人はなおさら。お昼ご飯を奢ってもらったりすると後で倍額請求されることもあるので、特にお金の動きには要注意です。常に対等な関係を。

 

④『俺はよくあるような悪いヤツじゃない』と自分で言ってる人ほど要注意です。少しでも良いことすると、「悪いヤツはこんなことしないでしょ?」なんて言ってきます。ラグーさんは20回くらい言ってました。うまい!! その他にも「別にあなたがチケットを買ったとしても、俺には1ルピーも入ってこないんだからね」というこっちが疑っていることを先に否定してしまったり、「俺はただお前を手伝いたいだけなのに、なんで俺を信じられないんだ?」と、こっちの人格を疑うような言動さえありました。

 

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この一件のせいで、インド人に対して人間不信を発動しています。ただ、これってすごいもったいないことなのでなんとか出国までには克服したいです。他人を信用する/しないの判断が僕にはすんごい難しいので、見極められる良い方法があれば、どなたか教えてください。

 

ちなみに、こんなショッキングなことがあってもHPがゼロにならなかったのは、インドのハンピというところに行けたからです。それについてはこちら→トカゲも見惚れるハンピ - なんちゃって世界一周